トラウマ




週末、約束通りシンが家を訪ねてきた。


ユウナ「いらっしゃい。時間通りだね。」
















ユウナ「なんか、この前と雰囲気違うね。」

シン「お前もな。私服もっと女の子っぽいのかと思った。」

ユウナ「なにそれw」

シン「子供のころフリフリの着てたじゃん。」

ユウナ「ママに着させられてたの。ていうかよく覚えてるね。」

シン「まぁな。」

ユウナ「あがって。コーヒーでいい?」

シン「あぁ。サンキュ。」







コーヒーを淹れてテーブルについた二人。


ユウナ「どうして寮に入ってるの?家から遠いから?」

シン「まぁそれもあるけど、いろいろとな。お前は?」

ユウナ「うちはママが最近再婚したんだ。弟ももう大学生だし、二人とも家でたの。」











シン「そっか。」

ユウナ「シンって、一人っ子だよね?お母さんは?」

シン「あの家に一人で住んでるよ。」

ユウナ「そうなんだ・・・。」


ユウナはなぜかそれ以上聞いてはいけないような気がして黙った。




 


ユウナ「バイトとかしてるの?」

シン「あぁ。夜にコンビニのバイトしてる。」

ユウナ「へぇ~。彼女とかはいないの?」

シン「今はいない。」






 


シン「お前は?」

ユウナ「う~ん、仕事忙しいんだよね。周り年上ばっかだし。」

シン「OL、だよな?」

ユウナ「うん。事務職だよ。」

シン「へぇ~。」










ユウナ「寮ってすぐ出られるの?」

シン「あぁ。申請すれば今月中には出られる。」

ユウナ「へぇ~。あ、部屋、見る?」

シン「あぁ。」







 


部屋の案内が終わり、二人はリビングのソファーに座った。


ユウナ「どう?狭いけど、部屋も分かれてるし。弟の家具は置きっ放しだからそのまま使っていいよ。」










 


シン「うん。思ったよりいいな。」

ユウナ「ホント?」

シン「うん。ロッキーも飼えるし。寮よりは家賃高くなるけど、今のバイト代で十分払える。」

ユウナ「そっか。」









 


ユウナ「で、いつ引っ越してくるの?」

シン「あぁ。早いほうがいいかな。申請して許可でたら来週には引越しできると思う。俺のほうは服とかしか荷物ないし。」

ユウナ「そうなんだ?じゃあそれまでにあの部屋掃除しとくね。」

シン「あぁ、ありがと。」







 


ユウナ「よかった~。私もこのまま一人だと貯金できなくて困ってたんだw」

シン「そうか。」

ユウナ「お昼公園で食べてたのもお昼代浮かすためだったしねw」

シン「そうだったのか。」








 


シン「よかったな~ロッキー。これからはずっとお前と一緒にいられるぞ。」

ロッキー「ワン!」

シン「お?お前もうれしいのか?」

ロッキー「ワンワン!」

シン「ははっ。」






 



ユウナ「 (前と全然イメージ違うじゃん。なんか心配して損した・・・。) 」
















シンが帰る時間になり、玄関までロッキーと見送りに出た。


シン「じゃあ許可でたらすぐ連絡する。」

ユウナ「うん。わかった。」











 


シン「ロッキーまたな。」

ロッキー「ワン!」

ユウナ「気をつけてね。」

シン「あぁ。じゃあ、ロッキーのことよろしくな。」

ユウナ「うん。」



そして1週間後にシンが引っ越してきた。
ルームシェアがはじまり、二人の関係はうまくいっていた。
シンが引っ越してきてから1ヶ月が過ぎた。









ユウナ「ただいま~。」


仕事から帰ってきたユウナがリビングへやってくるとシンがソファーで寝ていた。










 


ロッキー「クゥン・・・。」

ユウナ「 (疲れて寝ちゃったんだ?こんなところで寝たら風邪引くのに・・・。) 」











 


ユウナ「 (かわいい寝顔だこと。毛布持ってきてあげようかな?) 」


しばらくシンの寝顔を眺める。










 


シン「やめ・・・・・たすけ・・・て・・・・・。」

ユウナ「 (え?寝言?) 」


シンはうなされているようで苦しい表情をしている。
ロッキーは心配そうにシンを見つめていた。


シン「パ・・・パ・・・・・・。」

ユウナ「シン。起きて!」


不安になったユウナは思わずシンを揺さぶって起こした。




 


シン「あ・・・・おかえり。」

ユウナ「なんかうなされてたけど、大丈夫?」

シン「・・・・俺なんか言ってたか?」

ユウナ「・・・・よく聞き取れなかったけど・・・・。」

シン「そうか・・・・。」

ユウナ「大丈夫?なんか飲む?」

シン「いらない。・・・・部屋行くわ。」




 


シンはユウナと目を合わせようとしなかった。
そのままリビングを出て行く。











 


ユウナ「 (たすけて、って言ったよね?パパ、とも。シン、なにがあったの?) 」