有名誌の洗礼




 
 




メイク室のドアの前にクリスティーナとマロンが立ち尽くしている。


ロミオ「遅ぇぞ。なにしてんだ。」












 



マロン「ロミオちゃん・・・それが・・・。」

クリスティーナ「アイビーちゃんが無理だって出てこなくて・・・。」











 



ロミオ「はぁ?無理ってなにがだよ。」

クリスティーナ「今日の衣装、ちょっと露出が多くて・・・。」

マロン「アイビーちゃん、今までティーン誌だったからああいうファッションには抵抗があるんじゃないかな?」









 
  


ロミオ「・・・・そこどけ。」

マロン「え?」

ロミオ「いいからどけ。」












 



ロミオが二人を押しのけてドアの前に立つ。


ロミオ「おい。ここ開けろ。」

アイビー「いやです。私こんなカッコじゃ・・・・。」













 



ロミオ「いいから開けろ。俺だけ入る。」

アイビー「・・・・。」












 



ドアが開いてロミオ一人だけが部屋へ入った。


アイビー「ごめんなさい。でも私、こんな裸同然のカッコで全国紙のBiBiにデビューなんてできません。」

ロミオ「じゃあどんなカッコならよかったんだ?フリルのワンピか。」

アイビー「そうじゃ・・・。」

ロミオ「BiBiはお前がいままでいたようなおこちゃま雑誌とは違う。世界に通用するファッション雑誌だ。お前が着てるその服も、名の知れたファッションブランドのうん十万するドレスだ。それが不満だと?」












 



ロミオ「お前、夢はなんだ?」

アイビー「・・・・ショーに出るようなモデルになることです。」

ロミオ「ショーに出るようなスーパーモデルは乳が出てるような服だってかっこよく着こなす。モデルとはその服をいかにかっこよく、綺麗に見せるかが仕事だ。それくらいわかってるだろ。」

アイビー「・・・・。」











 




ロミオ「BiBiではそんな服、しょっちゅうあるぞ。下着の撮影だって多い。その程度でいやだなんていうくらいならさっさと辞めろ。お前には向いてねぇよ。」

アイビー「・・・・・。」

ロミオ「ティーン誌に土下座して戻してもらうんだな。」

アイビー「・・・・・・。」












 




ロミオ「やる気ねぇならいますぐ帰れ。タクシー呼んでやる。」

アイビー「・・・・。」

ロミオ「時間ねぇんだ。代わりのモデルを呼ぶからさっさと着替えて出て行け。」











 



ロミオが背を向けてメイク室を出て行く。












 



アイビー「・・・・。」












 



マロン「ロミオちゃん・・・・。」

ロミオ「あいつが着替えて出てきたらすぐ事務所に電話して代わりをよこしてもらえ。それからタクシー呼んでさっさと帰らせろ。」

マロン「え・・・?」












 



マロン「ちょっとロミオちゃんっ・・・・。」


ロミオがスタジオへ戻っていく。


マロン「・・・・・。」

クリスティーナ「そんな・・・・。」












 



メイク室のドアが開いてアイビーが出てきた。


マロン「アイビーちゃん。」

クリスティーナ「大丈夫?」












 




アイビー「ご迷惑おかけして申し訳ありませんでした。」

マロン「アイビーちゃん・・・。」

アイビー「お仕事させてください。」

クリスティーナ「もちろんよ、アイビーちゃん。」












 



マロン「一発目がそれなんて、躊躇しちゃうのも無理ないわよね。」

クリスティーナ「私だって絶対無理だもん。」

マロン「あんたはその前に水着だって着れないでしょ。」

クリスティーナ「そうですけど~。あ、アイビーちゃん、ニプレス使う?」

アイビー「あるんですか?」

クリスティーナ「もちろんよ。」

アイビー「ありがとうございます。」












 



アイビーがスタジオへやってきた。


アイビー「ロミオさん、さっきはすみませんでした。撮影はじめてください。」












 




ロミオ「遅ぇ。さっさと終わらせるぞ。」

アイビー「はい。」












 



アイビー「よろしくお願いします。」

ロミオ「おう。」












 


ロミオ「はじめるぞ。」


ロミオがカメラを構える。


アイビー「はい。お願いします。」












 



アイビーが次々とポーズを変えていく。












 



静かなスタジオにカメラのシャッター音だけが響いた。












 
             




















 

















 



ロミオ「 (こいつ、カメラ向けると顔つき変わったな。) 」












 



数時間後。


ロミオ「今日はこれで終了だ。お疲れさん。」

アイビー「はい。ありがとうございました。」












 




アイビー「ロミオさん、さっきは本当にすみませんでした。これからもよろしくお願いします。」

ロミオ「あぁ。」












 



ロミオ「お前、悪くねぇよ。がんばれ。」

アイビー「本当ですか?」

ロミオ「俺は嘘が嫌いなんだ。俺がいいってゆってんだから自信持て。」

アイビー「はい。」












 



ロミオ「お疲れ。また明日。」

アイビー「はい。」












 




アイビー「 (褒められた・・・・。怖い人かと思ってたけど、厳しいだけでちゃんと私のこと評価してくれた。) 」











 



ララ「ただいま~。」


ララがリビングへ入るとソファーでアイビーが横になっていた。












 



アイビー「おかえり~・・・。」

ララ「ごめん。起こしちゃった?」

アイビー「大丈夫・・・・。もう起きなきゃだし。」












 



アイビー「ふぁ~・・・・。」

ララ「ふふっ。よっぽど疲れてたみたいね。仕事だったの?」

アイビー「うん・・・。初仕事で緊張しちゃって・・・・すごく疲れちゃった。」
















ララ「すごいメイクね。」

アイビー「うん。今月から担当の雑誌が変わったの。」

ララ「そうなの。今度はどんなファッション誌なの?」

アイビー「それがね。BiBiなの。」












 



ララ「BiBiってあのBiBi??」

アイビー「そう。」

ララ「すごいじゃない!私毎月買ってるわよ。」

アイビー「うん。それで今日は初仕事だったんだけど・・・もう今までと全然違っててね。」












 



ララ「やっぱり雑誌によってカラーが違ってくるものなのね~。BiBiは20代中心だし。」

アイビー「うん。今日のファッションはすっごく大人なドレスばっかりで・・・露出が多くてね。」

ララ「そうなの?それでアイビーはいつ載るの?」

アイビー「来月発行のにはもう載るみたい。」











 




ララ「いろいろ大変そうね~。でも楽しみだわ♪」

アイビー「ありがとう。ちょっと恥ずかしいけど・・・。」

ララ「ふふっ。職場の人に自慢しちゃお~っと♪」

アイビー「え~、やめてよ。ホントに恥ずかしいんだから・・・。」












 



ララ「ラトは?仕事?」

アイビー「今日はそのまま実家帰るって言ってたよ。」

ララ「そうなの。ふふっ。やっぱりなんだかんだ言っても弟が気になってしょうがないのかしらね。」

アイビー「そうだよね~。私も会いたいな~ジャメルくん。」











 
 
 


アイビー「ララ、おなかすいたんじゃない?晩ご飯作るね。」

ララ「手伝う?」

アイビー「大丈夫。下ごしらえはしてあるから。」

ララ「ありがとう。ごめんね、料理担当二人に任せちゃって。」

アイビー「うん。ララはお掃除してくれてるから大丈夫だよ~。」











 



アイビー「ちょっと待っててね。」

ララ「はぁ~い。」