救出




 


ロミオ「おい。」


クラブから出たロミオがサマンサを呼び止める。












 


ロミオ「あいつどうした?」

サマンサ「あいつ?」

ロミオ「アイビーだ。」

サマンサ「あ~、新人さん?レイが誘ってましたよ。二次会がどうのって。」

ロミオ「二次会?」

サマンサ「レイのいつもの手。嘘ついて家に誘うの。私もあれで最初騙されちゃったし。」












 


ロミオ「お前、あいつの家知ってるよな?」

サマンサ「レイのマンション?もちろん知ってますよ~。」

ロミオ「今から行くぞ。」

サマンサ「え?今から??」












 


ピンポーン


玄関のチャイムが鳴り響く。


レイ「・・・・。」


ピンポーン


レイ「・・・・。」


ピンポンピンポンピンポンピンポ~~~~ン











 



レイ「ったく!!誰だようるさいな~!」


あいかわらずチャイムは鳴り止まない。


レイ「はいはい、今いくよ~!」












 



ガチャ


ドアを開けるとロミオとサマンサが立っていた。


ロミオ「よぉ。」

レイ「どうしたんだよこんな夜中に。」

サマンサ「二次会ここって行ってたでしょ?遅くなっちゃってごめんね。」












 


レイ「え?ちょ・・・。」

ロミオ「あがるぞ。」

サマンサ「お邪魔しま~す。」












 



二人がカウンターに座る。


レイ「ちょっと・・・。」

サマンサ「お酒もうないじゃないの~。レイなにか作ってよ~。」

レイ「なんで俺が・・・。」














 



サマンサ「だって二次会って言い出したのレイでしょ?新人さんに声かけてるのみたよ~。」

レイ「くっ・・・・。」

サマンサ「ねぇ早くなんか作ってよ~。」

レイ「まったく・・・・しょうがないな~。(なんで俺がこいつらのために・・・。) 」












 


レイ「 (こいつらを酔わせてさっさと帰らせるか。強めに作ってやる。) 」

サマンサ「ていうかほかのみんなは?」

レイ「帰ったよ。君たち来るの遅いんだよ。」

ロミオ「悪かったな。」

レイ「明日僕仕事あるから早めに帰ってくれよ。」

サマンサ「え~?そうなの?」













 


2時間後。


レイ「二人とももうそろそろ帰ったら?(こいつら酒強すぎだろ!サムが強いのは知ってたけど。) 」

サマンサ「え~まだ呑み足りない。」

ロミオ「トイレ借りるぞ。」

レイ「うん。ってそっちじゃ・・・。」











 



寝室のベッドにアイビーが横たわっているのを見つける。


ロミオ「 (やっぱりここにいたか。服も着てるし、大丈夫みたいだな。) 」












 




ロミオ「 (ったく・・・幸せそうな顔して寝やがって。) 」












 



ガチャ

ドアが開いてロミオがアイビーを抱えて出てきた。


レイ「あっ・・・。」

ロミオ「こいつ酔いつぶれてるみたいだから送ってくわ。」

レイ「で、でも泊まっていくっていってたからそのまま寝かせてても・・・。」












 


ロミオ「いや。お前も明日早いんだろ。じゃあ先帰るわ。」

サマンサ「は~い。おやすみなさ~い。」

レイ「ちょ・・・。」

ロミオ「おう。おやすみ。」

サマンサ「またね~。」












 


レイ「 (くそっ・・・・。) 」

サマンサ「ちょっとレイ~。おかわりまだぁ~?」













 



古びた倉庫街。
中を改装したこの家がロミオの自宅だ。












 



アイビーを抱えて車から降りる。
あいかわらず起きる様子はない。















 



階段を上がる。


ロミオ「 (こんだけ起きないってことは薬でも盛られたようだな。) 」












 



アイビーをベッドへ寝かせた。


ロミオ「ふぅ・・・。」












 



ロミオ「風呂入るか・・・。」












 



薄暗いバスルーム。
静かな室内に水音だけが響く。












 



ロミオ「 (ったく・・・あいつのせいで全然酔えなかったじゃねぇか・・・。) 」












 



昼近くになりようやくアイビーが目を覚ました。
食べ物のいいにおいで起きる。


アイビー「おはようございます。」

ロミオ「おう。今飯作ってるから座ってろ。」












 


アイビーがカウンターに座る。


アイビー「ここって・・・・。」

ロミオ「俺んちだ。」

アイビー「ロミオさんの?なんで・・・・。」












 



ロミオ「ゆうべのこと、覚えてるか?」

アイビー「えっと・・・クラブで呑んだあとにレイさんちに・・・。二次会っていって。でもみんなが来る前に私寝ちゃって・・・・。」

ロミオ「そうだな。」

アイビー「どうしてここに・・・。」

ロミオ「あのあと俺とサムがあいつんち行ったんだ。そんで俺がお前を連れて帰ったってわけだ。」












 


ロミオ「サムにも礼いっとけよ。協力してくれたんだから。」

アイビー「協力・・・?」

ロミオ「お前、たぶん睡眠薬盛られてるぞ。レイは女癖悪いからな。酔わせて抱くのがあいつの手だ。酔わないやつには薬を使う。」

アイビー「レイさんが・・・?」

ロミオ「ゆうべ忠告しただろ。」

アイビー「・・・でもそんな人には・・・。」












 


ロミオ「これだから芋は・・・・。もっと用心しろ。この世界は常識じゃないことも多い。それにこの街はお前の住んでた田舎とは違う。特に男には気をつけるんだな。」

アイビー「・・・・はい。」

ロミオ「頭痛とかはないか?」

アイビー「大丈夫です。まだちょっとぼーっとするけど。」












 


アイビー「でもなんで、助けてくれたんですか?」

ロミオ「お前どう見てもお嬢さんだろ?」

アイビー「え・・・?」

ロミオ「世間知らずな金持ちのお嬢様ってとこだな。」

アイビー「・・・・。」

ロミオ「レイはMensBiBiのモデルだから、そんなに仕事一緒になることもないだろ。事務所にNG出してもらえば大丈夫だし。でも男のモデルはちやほやされてる分、非常識なやつが多いから気をつけろよ。」

アイビー「・・・はい。」












 



ロミオ「一応スタジオでは俺はお前の上司だ。お前の面倒をみるのも仕事のうちだからな。」

アイビー「・・・・あの・・・ありがとうございました。助けてくれて。」

ロミオ「あぁ。」












 


二人は並んで食事をとる。


ロミオ「うまいか?」

アイビー「はい。料理もできるなんてすごいですね。」

ロミオ「一人暮らしが長いからな。簡単なもんなら作れる。」












 


ロミオ「俺は午後から仕事だから、それ食ったらついでに送っていってやるよ。」

アイビー「ありがとうございます。」

ロミオ「おう。」












 


二人が車に乗り込んだ。
海沿いの倉庫街を走る。


アイビー「ロミオさんちって倉庫?」

ロミオ「あぁ。古い倉庫を買い取って中だけ改装したんだ。」

アイビー「へぇ~。かっこいいですね。」

ロミオ「落ち着くんだよ。街中よりこういう殺伐とした所のほうが。」












 



アイビーがロミオの横顔を見つめる。


ロミオ「なんだ?」

アイビー「ロミオさんって、不思議な人ですね。」

ロミオ「よく言われる。」

アイビー「最初怖い人かと思ってました。」

ロミオ「それもよく言われる。」












 



アイビー「ロミオさんて17でこの世界入ったって行ってましたよね?」

ロミオ「あぁ。」

アイビー「高校は?」

ロミオ「中退した。元々カメラは趣味だったから、カメラマンの弟子についてこの世界入ったんだ。」

アイビー「へぇ~。」

ロミオ「お前はなんでこの世界に?スカウトか?」

アイビー「そんな感じです。」














 


ロミオ「お前今日は休みか?」

アイビー「はい。」

ロミオ「いっぱい寝とけよ。薬まだ切れてないだろ。」

アイビー「そうかも・・・。まだちょっと眠いです。」

ロミオ「今日はゆっくり休め。明日は一日中撮影入ってるからな。」

アイビー「はい。」












 



自宅前に到着して車から降りる。


アイビー「ありがとうございました。」

ロミオ「おう。じゃあまた明日。」

アイビー「はい。また。」













 



ロミオの車が去っていく。
アイビーは見えなくなるまで見送っていた。












 



アイビー「 (ロミオさん・・・ホントはすごく優しい人なんだ・・・・。) 」