出会い



 


学校から帰ったアイビーと双子の兄、ディーンは二人で宿題にとりかかっていた。
今年度から高校1年になった二人。
二人の上の兄、レオンは同じ高校の3年だ。


ディーン「そういえばジャマールがまた3人で遊ぼうって言ってたぞ。」








 


アイビー「あ~、うん。3人ならいいよ。」

ディーン「二人なら嫌なのか?」

アイビー「う~ん・・・。」








 


ディーン「気づいてると思うけど、あいつお前のこと好きみたいだぞ?」

アイビー「う~ん・・・なんとなく知ってたよ。」

ディーン「ジャマールのこと嫌いなの?」









 


アイビー「嫌いじゃないけど、いとこだよ?」

ディーン「別にいとこでもいいじゃん。いとこなら結婚できるんだし。」

アイビー「え~やだよ~。」









 


ディーン「いいじゃんデートくらい。」

アイビー「でもジャマール、ちょっと押しが強いっていうか・・・。」

ディーン「まぁね~。一途だからね。」









 


アイビー「それに私のこと好きとかかわいいとか言ってくるのって、ジャマールだけなんだよ。」

ディーン「いいじゃん。言ってくれる人がいて。」

アイビー「信じられない。私、かわいくないし。」

ディーン「ははっ。」








 


ディーン「アイビーは全くおしゃれに関心ないもんな!」

アイビー「だって絵描いたり本読んだりしてるほうが楽しいし。服買うお金あったら欲しい本買う。」

ディーン「アイビーの芸術好きは完全にママに似たな。将来はママみたいな小説家になるのか?」

アイビー「う~ん。読むのと書くのはまた違うんだよね。私には小説とか書けないし。絵は好きだけど趣味でいいかな~。」











翌日、アイビーは親友のラトーシャと図書館にいた。
ラトーシャとは両親が友達なので子供の頃から家族ぐるみの付き合いだ。
幼い頃からの親友で幼馴染だった。


ラトーシャ「ねぇ、ララまだぁ?」











ラトーシャ「もう委員会終わっていい頃だよね?」

アイビー「あ~、そうだね~。ちょっと遅いね。」

ラトーシャ「も~おなかすいたんだけど!」

アイビー「あはは。もうそろそろ来ると思うよ~。」










ラトーシャ「ていうか今日はどこ行くわけ?」

アイビー「あ~、なんか新しく出来たお店があるんだって。」

ラトーシャ「先週も買い物行ったじゃん。また行くの?」

アイビー「ララはショッピング好きだからね~。」








 


ラトーシャ「あたしも嫌いじゃないけどさ~。ていうかララはどこから情報仕入れてくるんだろうね。この街のこと知り尽くしてるよね。」

アイビー「あははっ。」

ラトーシャ「遅れたからアイスおごらせてやる!」








 


ララ「ごめ~ん!委員会が長引いちゃって。二人とも待った?」


ララがようやくやってきた。
彼女はアイビーの父、Jの兄Kの娘。
アイビーとはいとこだ。
高校1年生には見えないほど大人っぽく美人だ。
しかも成績も常にトップで、クラスの学級委員をやっている。










ラトーシャ「遅い!アイスおごりね。」

ララ「ごめ~ん。アイスはちゃんとおごるわ!」

アイビー「やったぁ~♪」

ラトーシャ「んでどこ行くわけ?」






 


ララ「この前行ったお店の裏通りに新しいショップがオープンしたの。美容室とかレストランとかいろいろ入ってるんだって。」

アイビー「へぇ~。そこにアイス屋さんあるかなぁ?」

ラトーシャ「食べるとこあるなら行く。もうおなかペコペコだよ。」

ララ「あはは。ごめんね待たせちゃって。さ!いこっ!」









 


店員「ありがとうございました~♪」


3人がお店から出てきた。










 


ラトーシャ「ふぅ。おなかいっぱい。」

ララ「服は割りと高めだったわね~。残念。」

アイビー「この後はどうする?」

少年「ねぇ、ちょっと君!」








 



少年「君だよ君!」


緑色の髪の少年がアイビーの目の前に立つ。


アイビー「え?私??」

少年「そうあんた!」





 


アイビー「なんですか・・・?」

少年「君、もったいないよ!」

アイビー「え・・・・?」








 



少年「素材がいいのに全然生かせてない!」

アイビー「そざい・・・・?」

少年「かわいいのにださいってこと!」

アイビー「ださい・・・・。」











少年「俺、ヘアメイクのお店でアルバイトしてるんだけど、よかったらカットモデルやらない?」

アイビー「モデル・・・ですか?」

少年「そう。練習代としてヘアメイクやらせてくれない?」

アイビー「ヘアメイク?」











少年「もちろんお代はいらないよ。カットモデルとしてだから。あんたそんなボサボサの頭じゃせっかくの美人が台無しだよ?俺に任せてみてよ。」

アイビー「・・・・・・。」

少年「大丈夫。絶対変な風にはしないから!」










アイビー「どうしよう・・・・。」

ラトーシャ「やってみれば?髪伸ばしてるわけじゃないんでしょ?」

アイビー「うん。」

ラトーシャ「面白そうじゃん。興味あるな。」

少年「おっ。君、ノリいいね!」











アイビー「う~ん・・・・。(あとで高額なお金請求されたりしないかな~?) 」

ララ「いいんじゃない?お願いしてみたら?(よさそうだったら私もやってほしいな。) 」

アイビー「二人とも、一緒にいてくれる?」

ラトーシャ「もちろんだよ。」

ララ「うん。最後まで見たいし。」

アイビー「それなら。」

少年「やったね!よっしゃ。店すぐそこだから。今日は休みだから他の客もいないから安心して。」







 


3時間後。


ラトーシャ「遅くない?」

ララ「ちょっと遅いね。パーマとかもやってるのかしら・・・。」

ラトーシャ「私おなかすいたんだけど。それにそろそろ帰らないと。」

ララ「そうだねぇ。」





 


ラトーシャ「あと10分待って来なかったら私帰るね。」

ララ「え~。一緒に待ってようよ。私出来上がり見たい。」

ラトーシャ「やだ。私は帰る。」

ララ「先にやれって言い出したのラトのくせに~。」

ラトーシャ「こんなにかかるなんて聞いてないもん。」








 


ララ「え~。」

アイビー「お待たせ・・・。」


アイビーがようやく出てきた。









 


二人が立ち上がる。

ララ「・・・・。」

ラトーシャ「・・・・マジ?」










アイビー「遅くなってごめんね。」

ララ「う・・・ん・・・・。」

ラトーシャ「すげぇ・・・・。」

アイビー「変・・・・かな・・・・?」









 



少年「素直に感想言ってみて。評価悪くても気にしないから。」

ラトーシャ「うん・・・・・。」

アイビー「・・・・どうかな?」








 


ラトーシャ「超かわいい。あたしが男だったら一目惚れしてたわ。」

アイビー「ホントに?」

ラトーシャ「うん。雰囲気全然違う。すっごくかわいいよ。」

アイビー「ありがと~。よかったぁ~。」

ララ「・・・・。」

アイビー「ララは・・・・どう思う?」











ララ「あ・・・・うん。すごく素敵よ。」

アイビー「ホント?!」

ララ「えぇ。びっくりしちゃって・・・・。」







 

アイビー「親友の二人にいいって言ってもらえて嬉しい。」

ラトーシャ「カラーもやったんだね。パーマもかけたの?」

アイビー「うん。パーマもちょっとだけ。」

ラトーシャ「どおりで遅いわけだ。」

アイビー「ごめんね。明日なんかおごるね。」











少年「なっ。俺の言ったとおりだろ?」

アイビー「うん。ありがとう。」

少年「今度からはちゃんと自分のメンテナンスもしろよ。女の子なんだから。」

アイビー「はいw」







 


アイビー「あの・・・・お金は・・・。」

少年「カットモデルって言っただろ?お金はとらないよ。」

アイビー「ホントにいいんですか?」

少年「あぁ。」









 


少年「あんたのこと、ひと目見たときから違和感あったんだよね。なんか違うって。」

アイビー「違和感・・・?」

少年「ホントのあんたを出せてないっていうか。だからあんたのいいところ引き出してあげたいって思ったんだ。」

アイビー「・・・・。」

少年「俺もすっきりしたよ。」





 


アイビー「あの・・・・この街の方ですよね?」

少年「あぁ。先月引っ越してきたばっかりなんだ。あんたらと同じ高校だよ。」

アイビー「高校生だったんですか?」








 


少年「あぁ。3年だ。引っ越してすぐここでバイトして修行してるんだ。」

アイビー「修行・・・・?」

少年「うん。スタイリストになるための修行。」

アイビー「あの・・・・名前を・・・・。」







 


少年「俺はジーン。ジーン・グリーンだ。同じ高校だから学校でも会うかもな。よろしくな。」

アイビー「ジーンさん・・・・。」









 


少年「長い時間拘束しちゃって悪かったな。」

アイビー「いえ、こちらこそありがとうございました。」








 


アイビー「ただいま~。」


家に帰り着いたのはすでに9時を回る頃だった。








 


クレア「おかえりなさい。アイビーご飯は・・・・。」

アイビー「ママ。」

クレア「・・・・・・・どうしたの?その髪。」








 


アイビー「あのね!スタイリストの卵っていう男の子がね。カットモデルやってくれたの!じゃなくてカットモデルになってって頼まれて・・・。」


怒られるんじゃないかと慌てたアイビーはおかしな日本語でまくし立てた。


クレア「アイビー、ママ怒らないから大丈夫よw」

アイビー「・・・・どうかな?」










 



クレア「すっごく素敵!」

アイビー「本当?」

クレア「えぇ!あなた美人なのにおしゃれに全く気を使わないから、興味ないと思ってたわ。」

アイビー「うん。あんまり興味なかった。」







 


クレア「女の子なんだし。もうちょっと気を使ったほうがいいわよ。アイビーとってもかわいいんだから。」

アイビー「ありがとう。」

クレア「これからはマメに美容室も行くのよ?いままで1年に1回しか美容室なんて行かなかったものね。」

アイビー「はいw」

クレア「ピンクの髪も、あなたにとっても似合ってるわよ。」

アイビー「パパ怒らないかなぁ?」

クレア「校則違反じゃないんだし大丈夫よ。心配はするかもしれないわねw」

アイビー「なんの心配?」





 


そこへディーンがやってきた。


ディーン「アイビー?」

アイビー「ディーン、ただいま。」

ディーン「どうしたのその頭。すげーかっこいいじゃん!」

アイビー「ホント?」






 



ディーン「うんうん。超クールだな。お前、これからモテるんじゃないか?」

アイビー「別にモテなくてもいいんだけど・・・・。」

ディーン「いいな~ピンク似合って。どこでやってもらったの?俺も行こうかな。」

アイビー「これは店員さんじゃなくてスタイリストの卵してるバイトの人がやってくれたの。」

ディーン「へぇ~。いいな~。」






 


J「ただいま。」


仕事から帰ったJが玄関へ入ってくる。


アイビー「パパ、おかえりなさい。」

クレア「おかえりなさい、あなた。」

J「誰かと思ったらアイビーだったのか。」








J「てっきりディーンが彼女でも連れてきたのかと思ったぞ。」

アイビー「ヘアメイクやってもらったの。」

J「そうか。随分思い切ったな。」

アイビー「パパ、どうかな?変じゃない?」








 



J「あぁ。いいと思うぞ。」

アイビー「よかった。」

J「お前はママと似て美人だからな。どんな髪型でも似合うよ。もっと自分に自信持ちなさい。」

アイビー「はい。」

J「これからは特に痴漢とか変なのに気をつけるんだぞ。」

アイビー「うん・・・。」







 


その晩アイビーは兄のレオンの部屋を訪れた。


アイビー「お兄ちゃん入るよ~。」

レオン「ちゃんとノックぐらいしろよな~。」

アイビー「ごめんごめん。」










ディーン「おっ、どうしたんだその髪。」

アイビー「あのね、お兄ちゃんジーンって人知ってる?」

ディーン「あぁ、あいつかw お前もあいつにやってもらったのか。」

アイビー「お前も?」








 


ディーン「俺もこの前あいつにやってもらったんだよ。カラーだけだけどな。放課後の学校で。」

アイビー「友達なの?」

ディーン「クラス一緒なんだよ。この時期に転校生なんて珍しいだろ?しかもあいつあんな頭だからすごい目立つし。」

アイビー「そうだね。」

ディーン「なんだお前、ナンパでもされたのか?」











アイビー「今日ね、ラトとララと一緒に買い物してたら声かけられて、カットモデルやらないかって言われたの。」

レオン「ふぅん。それでやってもらったのか。」

アイビー「うん。お礼言いたくて。」

レオン「あいつあんま学校来ないからな~。来ても途中でバイトでかけたりするし。」

アイビー「そうなんだ?」







 



レオン「学校より、店に行ったほうが会える確立高いかもな。バイトにはほぼ毎日行ってるみたいだぞ。」

アイビー「そうなんだ?ありがとう。」

レオン「おう。」










 



アイビー「 (ジーンさんかぁ~・・・・。また会えるかな?今度はちゃんとお礼言わなきゃ。) 」