失恋



 


放課後、アイビーは図書館へ来ていた。
一人のときはここで本を読むのが彼女の楽しみだった。















 


ジャマール「アイビー、やっぱりここにいたんだ?」

アイビー「ジャマール。珍しいね。」














 


アイビー「ジャマールも本借りに来たの?」

ジャマール「いや、アイビーと話がしたかったんだ。ディーンに聞いたらたぶんここだろうって言うから。」

アイビー「そうなんだ?どうしたの?」

ジャマール「この前3年生の人とどっかいっちゃっただろ?」

アイビー「あぁ、ジーンのこと?」






 


ジャマール「ジーンていうんだ・・・?あの人と付き合ってるの?」

アイビー「う~ん、付き合うとかの話はしてないんだよね~。どうなんだろう?」

ジャマール「ホント?よかった~。」












 



アイビー「でも好きとは言われたよ。」

ジャマール「え?アイビーは・・・・どうなの?」

アイビー「私も好きとは言ったし。これって付き合ってるのかなぁ?どう思う?」

ジャマール「それはもう付き合ってるんじゃ・・・・。」

アイビー「でもつきあうってどっちかが付き合おうとか宣言するものじゃないの?」









 



ジャマール「最近はそういうの言わなくても付き合ってたりするみたいだし・・・・。」

アイビー「そういうものなの?じゃあキスしたらもう付き合ってるのかな?」

ジャマール「え?!キスしたの??」

アイビー「う・・・うん・・・・。」







 



ジャマール「 (もうそんなとこまで進んでたなんて・・・・・。ショックすぎる・・・・。) 」

アイビー「 (今度ジーンにちゃんと聞いてみようかなぁ?) 」















 


ディーン「珍しいな。ジャマールがカラオケ店なんて。」

ジャマール「騒がしいとこにいないと落ち込んじゃいそうなんだ。」

ディーン「なにか落ち込むようなことがあったのか?」

ジャマール「さっきアイビーに会いに行ってきたんだよね。」

ディーン「あぁ。図書館にいただろ?」








 


ジャマール「うん。あの3年生と・・・付き合ってるんだって。」

ディーン「そっか。(やるじゃんアイビー。) 」

ジャマール「付き合うとかは言ってないらしいんだけど、好きっていうのはお互い言ってるんだって。」

ディーン「へぇ~。(なんだそれ。小学生かよ!) 」

ジャマール「キスもしたんだって。」

ディーン「・・・・そっか。(なんでそれをジャマールに言っちゃうんだよ!あいつ天然っていうよりバカだな。) 」





 


ジャマール「なんで僕じゃダメなのかな?僕のなにがいけないんだと思う?」

ディーン「う~ん、髪型じゃないかな?」

ジャマール「え??この髪型じゃだめなの??」

ディーン「あいつ長いの苦手みたいだからな~。俺にもさんざん切れって言ってくるし。」

ジャマール「それを早く言ってよ!」

ディーン「いやいや、髪だけが問題じゃないとは思うけどさ!」

ジャマール「じゃあほかになにがあるの?」








 


ディーン「いとこじゃん。」

ジャマール「いとこのなにがだめなの?いとこなら結婚できるんだよ。」

ディーン「う~ん、そうなんだけどさ。あいつそういうの嫌みたいだぜ?」

ジャマール「そんなのもう・・・・生まれたときからダメじゃないか・・・・。」









 


ディーン「まぁまぁ。もういいかげんあいつのことは諦めろよ。ほかにいい女いっぱいいるって!」

ジャマール「・・・・昔はよく一緒にお風呂も入ってたのに。」

ディーン「それ幼稚園のころだろ!」

ジャマール「ディーンは彼女いないよね?」

ディーン「まぁ・・・な。」

ジャマール「好きな子はいるの?」

ディーン「うん・・・。」

ジャマール「じゃあ今度その子の友達でもいいから紹介してよ。」

ディーン「いや~それは・・・・無理かなw」

ジャマール「ケチ。」





 


ディーン「もうそんな落ち込んでばっかいないで、歌でも歌って発散しようぜ。」

ジャマール「歌?」

ディーン「ちょうどカラオケも空いたみたいだし。ほらっ。」


ディーンが立ち上がり、カラオケ機のほうへ歩いていく。











 



二人一緒に歌をうたいはじめた。
にぎやかな店内。
誰も二人の歌など聴いてはいない。















 



ジャマールを励まそうと、アップテンポな曲を入れたつもりだったが、ジャマールはアイドル持ちでマイクを握っている。













 



ディーン「 (そういうとこが、ダメなんじゃないかなぁ・・・?) 」

















 



数日後の放課後、ラトーシャは公園へやってきた。


ラトーシャ「 (ララんちに行くのはここを通るのが一番近いんだよね~。) 」













 



ラトーシャ「 (あれ?あそこにいるのって・・・・・ディーンだよね?隣の女の人・・・・誰?) 」















 



ラトーシャ「 (二人すごく仲よさそう・・・・。前からの知り合いみたい・・・・。) 」















 



声は届かない。
しかし二人の楽しそうな雰囲気が伝わってきた。
ラトーシャは気になってその場に立ち尽くしていた。















 


ジーナ「実はね、いま夫が出張中で家にいないの。」

ディーン「マフィアの世界にも出張ってあるんですか?」

ジーナ「上司の付き人みたいなものよ。ブリッジポートへ行っているの。」

ディーン「へぇ~。」

ジーナ「いっつも公園でばかりだから、うちに来ない?たまにはコーヒーでもご馳走するわ。」