闇の中



 


夕暮れ時の公園。
ディーンとジーナはあの時以来はじめての再会を果たした。












 


ジーナ「来てくれたのね。会えて嬉しいわ。」

ディーン「俺も。」

ジーナ「あれから毎日来てたんだけど、なかなか会えないから嫌われちゃったんじゃないかと思ってたのよ。」

ディーン「まさかw」






 


ディーン「ここ最近テストで忙しくて。でももう大丈夫。」

ジーナ「そうなの。お疲れ様。」

ディーン「うん。ジーナさんは、だんなさん帰ってきたの?」

ジーナ「えぇ・・・・。」

ディーン「そっか・・・。」





 



ジーナ「でも今日は帰りが遅いみたい。うち来る?」

ディーン「・・・・いいの?」

ジーナ「もちろんよ。あの人が帰るのはどうせ夜中だし、安心して。」

ディーン「そうなんだ?じゃあ・・・行こうかな。」

ジーナ「ふふっ。じゃあちょっとケーキでも買って帰ってお茶しましょう。」








 



ラトーシャ「 (ここに来るべきじゃなかったかな・・・・。) 」









 




ラトーシャ「 (ばかなあたし・・・。二人の姿を見ても、自分が苦しむだけだ・・・・。) 」










 



すっかり日が暮れたころ、校舎から出てきたララ。
今日は学習クラブの日だ。


ララ「 (すっかり暗くなっちゃったな・・・。) 」








 




ララ「 (今日はママも帰り遅いし、早く帰らなくちゃ。ダメって言われたけど・・・大丈夫よね、公園通っても。) 」











 



公園の脇の暗い小道を歩き出した。
とても静かな夜。
虫の鳴き声だけが響いている。










 
 


ララ「 (なんだか・・・・私の足音とは別の、もうひとつの足音がする気がする・・・・。気のせいかしら・・・・?ちょっと不安になってきたわ・・・・。) 」












 



ララ「 (ほら・・・。やっぱりそうだわ・・・・・。ゆっくり歩いて抜かせようとしても、同じ感覚で歩いてるみたい・・・・。全然近づいてこない・・・・。) 」












 



急にララが歩くのをやめ立ち止まった。
同時に足音も止む。


ララ「 (確認したいけど怖くて振り向けない・・・・・・。走るのよララ!) 」










 



急にダッシュで走り出す。


ララ「ハァ・・・・ハァ・・・・・ッ。」


ララが走り出したと同時に足音も駆け足になった。


ララ「 (なんで追ってくるの?!こわいっ!!) 」








 



ララ「ハァ・・・・・ハァ・・・・・(あそこまでいけば明るい。)」 


相変わらず足音は追ってくる。










 



ララ「ハァ・・・・っく・・・・・・。(怖いよ・・・・ママ~!)」


走りながら堪えきれず泣き出した。

ドンッ!


ララ「きゃっ!」


こぼれた涙を拭いた瞬間誰かにぶつかって立ち止まる。


ララ「!」











 



ジーン「おわっ。ごめっ・・・。」

ララ「ジーン・・・さん・・・・。」


ぶつかったのはジーンだった。


ジーン「お前また公園通って帰ってんのか?あぶないって言っただろ。」








 




ララ「ジーンさ・・・・・。うぇっ・・・・・。」

ジーン「え?ちょ・・・・なに?どうした??」












 




ララ「うぇ~~~~~!ごわがっ・・・・た~~~~。わ~~~~ん。」

ジーン「おいっ。どうしたんだよ?ちょ・・・・・泣くなっ。」


急に泣き出したララを見ておどおどするジーン。
ジーンをみてほっとしたのか、一気に緊張がとけたララはしばらくの間泣き続けていた。








 



ララの自宅。
家に誰もいなくて不安だというララを送り届けたジーンは、ララが落ち着くまでそばについていた。


ジーン「落ち着いた?」

ララ「うん・・・・。ありがとう。」









 



ジーン「これでもう懲りたろ?あそこは通っちゃだめだって。」

ララ「うん・・・・。」

ジーン「まぁなにもなくてよかったよ。」

ララ「・・・・ジーンさん・・・・ほかに誰か見なかった?」

ジーン「お前が泣き止んで話し出すまでちょっと時間あったからな。その間に逃げたのかもな。俺もお前と会うまでは誰もみてないぞ。」

ララ「そう・・・・。」







 



ララ「今日ジーンさんに会えてなかったら・・・・私今ここにこうしていられなかったかもしれないわ。本当にありがとう。」

ジーン「いやいや。俺と会ったのは偶然だし。でもホント、気をつけろよ。」

ララ「うん。」

ジーン「親御さんは何時ごろ帰るんだ?」

ララ「もうそろそろ帰ってくると思う。」







 



ジーン「そうか。じゃあもう安心だな。」

ララ「うん。」

ジーン「じゃあ俺はそろそろ帰ろうかな。戸締りちゃんとしろよ。」

ララ「はい。」









 



ジーン「じゃあな。」

ララ「本当にありがとうね。」

ジーン「あぁ。またな。」

ララ「・・・・ジーンさん。」

ジーン「ん?」








 




ララ「私、あなたが好き。」

ジーン「え・・・・?」

ララ「昨日アイビーからつきあってるって聞いたわ。でもどうしても・・・・・・・・今日会ったらこのまま言わずにいられないと思ったの。」

ジーン「・・・・・。」

ララ「あなたは私のこと一瞬で見抜いた。そんな人に出会ったのははじめてだったわ。」

ジーン「・・・・。」








 



ララ「好きでいても・・・・・いいですか?」

ジーン「・・・・・ごめん。困る。」

ララ「・・・・・・・。」

ジーン「俺、アイビーのこと大事だから。」

ララ「・・・・・・そう・・・・よね。・・・・・ごめんなさい。」

ジーン「うん。」

ララ「アイビーの・・・・・どこが好きなの?」







 




ジーン「ピュアなとこ。まっすぐで、穢れがない心かな。あいつ、子供みたいな目してるじゃん。」

ララ「・・・・・うん。」

ジーン「あの笑顔を大事にしたいって思うんだ。」

ララ「そっか・・・・。」

ジーン「あんたがいいやつなのはわかる。これからもアイビーと仲良くしてくれ。」

ララ「・・・・・うん。」

ジーン「じゃあな。コーヒーご馳走様。」






 



ララ「気をつけてね。」

ジーン「あぁ。」


ジーンがドアを開けて出て行く。












 



バタン!


ドアの閉まる音だけが響いた。













 





ララ「 (こうなるってずっと前からわかってたじゃないララ。・・・・・・なのにどうして・・・・・・。) 」












 




ララ「 (どうしてこんなに涙が出るの・・・・・・・?) 」


こみ上げる涙を我慢できず、立ち尽くしたまま泣き出した。


ララ「ううっ・・・・・・・。」








 




ララ「 (はじめてフラれた・・・・・・。それが・・・・ライバルが親友だからこんなに悲しいの・・・・・?違う人ならよかったの・・・・・?どうして・・・・・・。でもアイビーは私の大事な親友よ・・・・・。このことを言ったらきっとあの子・・・・・・つらい思いをする・・・・・・・・。私には・・・・・・・・言えない。) 」










 





ララ「うっ・・・・・・・うぇっ・・・・・・・・・。え~~~ん。」























 




学習クラブが終わり図書館へ寄っていたローガン。
だいぶ外は暗くなっていた。
校舎を出るとララの横顔が見えた。










 




ローガン「 (あいつ、ララだよな。あいつも今帰りか。) 」













 




ローガンも家に向かって歩き出した。


ローガン「 (あいつも同じ方向か。・・・・そういえば家近所だって言ってたな。) 」











 



ローガン「 (なんとなく後ろついてきたけど・・・・・公園なんか入ってあいつ大丈夫か?ちょっと心配だし、離れない程度に後追ってみるか。) 」












 




ローガン「 (つうかこの道かなり暗いな・・・・・。あいついつもこんなとこと通ってんのかよ。危ないだろ。) 」


ララが急に立ち止まる。


ローガン「 (なんだ?急に止まったぞ。) 」


つられてローガンも立ち止まった。






 



ローガン「 (あ!走り出した。なんなんだよあいつ!) 」


ローガンもララの後を追うように駆け出す。












 



ララの前に誰かが立ちふさがり、ララが立ち止まる。
声までは届かない。


ローガン「 (あれって・・・・たしかアイビーの男だよな。) 」










 



ローガン「 (ララも好きな男じゃなかったっけ。なんだよ、王子様登場かよ。) 」
















 



ローガン「 か~えろ・・・。」