それぞれのリアル



 



アイビーは学校帰りにジーンの店の前にやってきた。











 




アイビー「 (どうしよう・・・。学校じゃなかなか会えないからここに来ちゃったけど、ジーンさん居るかな?・・・待ってたら出てくるかなぁ? ) 」















突然ドアが開いてジーンが出てきた。


アイビー「!」

ジーン「よぉ。」













ジーン「窓の外にあんたの姿が見えたから、抜けてきた。」

アイビー「ごめんなさい、お仕事中に。」

ジーン「大丈夫だよ。俺もう帰るとこなんだ。」

アイビー「この前のお礼、ちゃんと言いたくて・・・。」

ジーン「そんなの別にいいのに。」













アイビー「この前はありがとうございました。最初はちょっとびっくりしちゃって・・・変な人かと・・・。」

ジーン「そんな風に思ってたの?w」

アイビー「だっていきなり声かけられたのなんてはじめてで・・・。」

ジーン「あはは。ナンパかと思った?」













アイビー「ナンパっていうか・・・・新手の詐欺かと・・・・。」

ジーン「ぶっ!w あんたやっぱ面白いなwww」

アイビー「え?」

ジーン「いいキャラしてるよ。」

アイビー「キャラ・・・?」








 


ジーン「それより、腹減んねぇ?」

アイビー「あ!ごめんなさい。もう帰る時間ですよね。」

ジーン「どっか食べに行こうぜ。」

アイビー「え?」

ジーン「片付け済んだらすぐ出るから、ちょっと待っててくれる?」

アイビー「・・・はい。」







 


二人は近くのレストランへやってきた。
テラス席に座る。












 



アイビー「ジーンさん、学校来ないんですか?」

ジーン「そのジーンさんってのやめてくれる?」

アイビー「え?」

ジーン「ジーンでいいよ。」

アイビー「・・・・でも2年も先輩だし・・・。」







 



ジーン「そんなの気にすんな。名前、アイビーだっけ?」

アイビー「はい。アイビー・スカイブルーです。」

ジーン「俺もアイビーって呼ぶからあんたもジーンって呼んで。」

アイビー「・・・・はい。」

ジーン「あんた、学校で人気らしいじゃん。」








 



アイビー「そのあんた、っていうのも・・・やめてほしいです・・・。」

ジーン「ははっ。わかった。じゃあアイビーも敬語ナシな。」

アイビー「・・・・うん。」

ジーン「モテモテらしいな。」

アイビー「男の人って外見が一番なんだね。」








 



ジーン「そりゃそうだろ。人間ってのはまず見た目から入るからな。人それぞれタイプはあるけど、万人受けするタイプってもんもある。アイビーはまさにそれ。誰が見てもかわいいと思うよ。」

アイビー「なんか、ちょっとショック・・・。」

ジーン「男の嫌な部分みたから?」

アイビー「・・・・ジーンもそう?」

ジーン「そうだな~。」







 



ジーン「好きになるかどうかは別として。俺も最初は見た目で判断するかな。それから性格を知って好きになる。」

アイビー「・・・・。」

ジーン「俺、よけいなことした?」

アイビー「え?」

ジーン「俺がイメチェンさせたから周りの変化に動揺してるんだろ?」







 



アイビー「あ・・・。ジーンには感謝してるよ。ありがとう。でも周りの急激な変化についていけない自分がいて・・・。」

ジーン「そうだな。まぁそのうち慣れるよ。みんなお前の内面的なもんにもそのうち気づくだろ。」

アイビー「内面・・・・。」

ジーン「人間大事なのは内面だからな。外見なんて変えようと思えばいくらでも変えられる。でも内面を変えるのは自分次第。」








 



アイビー「ジーンって・・・・大人だね。」

ジーン「周りが大人ばっかりだからな。俺はもっと早く大人になりたい。」

アイビー「どうして?」







 


ジーン「俺、プロのスタイリストになるのが夢なんだ。」

アイビー「プロ?」

ジーン「うん。こういう街で、一般の人を変えていくのも面白いけど、俺はプロになってショーとかに出るような仕事がしてみたい。」

アイビー「素敵だね。」

ジーン「だろ?」







 


ジーン「そのために今バイトして専門学校に行くための貯金してるんだ。」

アイビー「えらいな・・・ジーンは。」

ジーン「そんなことねぇよ。うちは母子家庭だし、二人三脚でやっていかないと。母さんにばっかり負担かけられねぇからな。」

アイビー「そうなんだ・・・・。」








 


アイビー「子供の頃からスタイリストが夢だったの?」

ジーン「うん。母さんは昔ショーパブでダンサーしてたんだ。小さかった俺は仕事場にもよく連れて行かれた。煌びやかな衣装に派手なメイクのダンサーたちを見てて、かっこいいなって思ったんだ。」

アイビー「・・・・。」

ジーン「それからかな~。スタイリストを目指すようになったのは。」


アイビーにはジーンが眩しかった。
夢を語る彼のブルーの目はとても美しくキラキラ輝いていた。











アイビー「 (夢・・・・。私の夢はなんだろう・・・・。) 」













 























 


ディーンはジーナと公園にいた。
二人はここでおしゃべりするのが日課になっていた。
ディーンはジーナの不思議な魅力に惹かれはじめていた。


ディーン「だんなさんはどんな仕事をしてるの?」

ジーナ「・・・・これを言うと引かれるんだけど。」

ディーン「悪い仕事?」

ジーナ「・・・・マフィアの下っ端なのよ。」

ディーン「・・・・そうなんだ。」






 



ジーナ「あなたとはじめてここで会った日、私靴を履いてなかったでしょう?」

ディーン「・・・そうだったね。」

ジーナ「彼はキレやすい人なのよ。仕事柄、緊張感で張り詰めているのかしらね。」

ディーン「暴力、とか?」

ジーナ「いいえ・・・。暴力は振るわない。・・・・・・・でも・・・。」

ディーン「・・・?」












ジーナ「機嫌が悪いとね・・・・私を抱くの。」

ディーン「・・・・。」

ジーナ「まるでレイプみたいよ・・・・。」

ディーン「・・・・・。」

ジーナ「ごめんなさい。高校生のあなたにこんな話・・・。」

ディーン「離婚しないの?」








 



ジーナ「彼を愛してるの。でも・・・・・レイプみたいなセックスじゃ・・・・・愛されてる気がしなくて・・・・。」

ディーン「・・・・・。」

ジーナ「靴を履いてなかったのは口論になって家を飛び出してきたからよ。」

ディーン「そうだったんだ・・・?」

ジーナ「機嫌がいいときはとっても優しい人なの。」

ディーン「・・・・・。」










ジーナ「私は、彼に愛されているのかしら・・・・。ここにきて考えるのよ。」

ディーン「・・・・。」

ジーナ「あなたにはまだ難しいわよね。」

ディーン「・・・・。」













ジーナ「ディーンは初体験はまだでしょう?」

ディーン「・・・・・うん。」

ジーナ「好きな子はいるの?」

ディーン「今は・・・いるよ。」

ジーナ「そう・・・。」


ジーナはそれ以上はなにも聞いてこなかった。
二人は黙ったまま池を見つめていた。