夏の終わり



 



ディーンはジーナの家を訪ねた。
チャイムを押しても返事はない。
耳を済ませてみても、家の中からは物音ひとつ聞こえてこない。












 



ディーン「 (ジーナ・・・・大丈夫なのかな。)」

女性の声「あんた、もしかしてその家の住人の知り合い?」












 




振り向くと向かいの家の前に女性が立っている。


ディーン「知ってるんですか?」










 




女性「その家の人なら3日前に引っ越したわよ。」

ディーン「え・・・?」










 



女性「急に引越し決まったみたいで、いっぱい男たちがやってきてあっという間に荷物運んで行ったわ。」

ディーン「・・・・どこに行ったかわかりませんか?」

女性「さぁ~。近所付き合いも全然なかったしね~。誰も知らないんじゃないかしら。」










 




女性「ここの旦那さん、マフィアでしょ?みんな怖がってたから引っ越してくれてよかったわよ~。」

ディーン「・・・・奥さんも一緒でしたか?」

女性「あぁ。あのおとなしい女性ね。えぇ。もちろん一緒に行ったみたいよ。」

ディーン「そうですか・・・・・。」










 



女性「あなた、この家の人とどういう関係?」

ディーン「あ・・・・いや、ちょっとお世話になっただけで・・・・。」

女性「ふぅ~ん・・・・。」










 



公園のベンチにたたずむディーン。
夕日が湖面を照らす。












 




ディーン「 (ジーナ・・・・旦那さんのこと愛してるって言ってたもんな。無理やり連れて行かれたわけじゃないんだろうな・・・・。) 」












 




ディーン「 (監禁とかじゃなくてよかったじゃないか・・・・。それにきっと俺のことなんてもう・・・・。) 」











 



日が暮れて当たりは真っ暗になった。


ディーン「 帰ろ・・・・。」











 



公園の小道を通り、家へと帰るディーン。












 



ディーン「 (好きな人と一緒にいるんだから・・・・。彼女はきっとそれで幸せなんだ・・・・・。) 」











 




ディーン「 (旦那は彼女のこと愛してるのかな・・・。俺は・・・・・。) 」











 



ディーンの瞳から大粒の涙がこぼれた。
声を殺して泣くディーン。

ディーン「うっ・・・・(俺は本気で愛してた。もう彼女に会えない。) 」









 



ディーン「ひっく・・・・(もう会えないんだ・・・・・。ジーナ・・・・。) 」











 




















 


夏休みはあっというまに時が過ぎ、残すところ数日となった。
レオンたちは夏の思い出に、丘の上の湖でキャンプを決行した。
男の子たちがお昼と夜の食事用に魚を釣っている。












 



レオン「ところで妹とはどこまでいってんだ?」

ジーン「え?」

レオン「付き合うには段階ってもんがあるだろ。」

ジーン「あ~。」

レオン「お前まさかすっ飛ばして・・・。」










 



ジーン「なわけねぇだろ!俺は意外に真面目なんだよ?」

レオン「ははっ。んでどこまで?」

ジーン「お前に言えるかよ。」









 




ディーン「ジャマール残念だったな。夏風邪だってさ。」

ローガン「休みの最後に風邪か。とことん不器用だな。」

ディーン「ははっ。あいつらしいよ。」










 



ローガン「お前はもう立ち直ったみたいだな。」

ディーン「まぁ・・・・いつまでも落ち込んでられないしな。」


ローガンにはジーナの家に通っていた時点で、怪しまれてすぐにバレてしまったので正直に全部話してある。









 



ローガン「女紹介しようか?他の高校でよければ。」

ディーン「遠慮しとく。女はもう当分いいや。」

ローガン「ふぅん。」

ディーン「お前は器用だよな。よく何人も同時に付き合えるよな。」

ローガン「誰とも付き合ってはない。単なる遊びだ。向こうも承知の上だし。」

ディーン「俺には無理だな・・・。」

ローガン「だろうな。」










 




アイビーたち三人は魚が釣れるまで日陰に入って休んでいる。


アイビー「今晩肝試しするってお兄ちゃん言ってたよ。」

ラトーシャ「肝試し?絶対嫌なんだけど。」

ララ「ふふっ。ラトは見かけによらずそういうの苦手よね~。」










 




ラトーシャ「やだやだ。あんたたちよく平気だよね。」

ララ「あら。別に平気なわけじゃないわよ。ただ現実味がないっていうか。」

ラトーシャ「ララは自分の目で見ないと信じないタイプだもんね~。」

ララ「たしかにそうね。」

アイビー「私は見てみたいって思うけどな~。」

ラトーシャ「オバケを??あんたバカじゃないの?」

アイビー「だっておしゃべりできたら楽しそうじゃない?」

ラトーシャ「はぁ??」

ララ「アイビーらしいわね。」







 




ラトーシャ「ところであんた、ジーン先輩とは最近どうなの?」

アイビー「え?どうって、普通だよ?」

ラトーシャ「キス以上のことはしたの?」










 



アイビー「そういうのは・・・・まだだけど。」

ラトーシャ「もうつきあって2ヶ月近くなるわよね?」

アイビー「うん。来週で2ヶ月だよ。」

ラトーシャ「求めてこないの?ジーン先輩。」








 



アイビー「う~ん・・・・そうだねぇ。」

ラトーシャ「ティーンの男なんて頭の中それでいっぱいだと思ってた。」

ララ「大事にしてるんでしょ、アイビーのこと。」

アイビー「そうなのかなぁ?」








 



アイビー「そういえば、ララは好きな人いないの?」

ララ「え?私?」

アイビー「そういう話全然聞かないよね。高校入るとき一番楽しみにしてたのララなのに。」









 




ララ「私は・・・・いないわよ。なんか・・・・同じ年の男の子って、子供っぽくみえちゃって。」

アイビー「そうなの?ローガンは?」

ララ「どうしてローガンが出てくるの?」

アイビー「ローガン大人っぽいじゃない。顔はよく見ると童顔だけど、いつもクールだし。かっこよくない?」








 



ララ「やめてよ。私のタイプじゃないわ。」

アイビー「そうなんだ?」

ラトーシャ「 (ララ・・・・まだジーン先輩のこと好きなのかな?) 」









 



ララ「あ!ほらっ。釣れてるみたい。そろそろ食事の準備しましょうよ。」

アイビー「そうだね。」

ラトーシャ「ララ料理なんてしたことないでしょーが。」

ララ「料理は二人に任せるわ。私はお片づけがんばるのよ。」










 




男の子たちの釣った魚をラトーシャがさばいて、さっそく焼き始めた。


アイビー「ラトってホント器用だね。魚もさばけるなんてすごい!」











 



ラトーシャ「うちは家族多いし子供の頃から手伝わされてたからね~。」

アイビー「私は包丁はあぶないって触らせてもらえなかったよ~。」

ラトーシャ「ははっ。あんたんちは過保護だねぇ。」









 




アイビー「最近ようやく一人で任されるようになったもん。でも魚はさすがに無理だな~。」

ラトーシャ「そう?慣れたら平気だよ。」

アイビー「私もがんばって魚さばけるようになろう!」

ラトーシャ「うんうん。がんばれ~。」









 




ディーン「自分で釣った魚はうまいな~。」

レオン「ラトの料理の腕だろーがw」

ローガン「9割それだな。」










 



レオン「てかなんでお前こっちにいんの?」

アイビー「え?私?」

レオン「普通彼氏と食べるだろ。」








 




アイビー「いや・・・・なんか・・・・家族の前だと恥ずかしいっていうか・・・。」

ディーン「なんだそれw」

アイビー「なんとなく・・・w」











 




ラトーシャ「なんでこっちにいんの?」

ジーン「いや、てっきりアイビーもこっちにくるもんだと。」

ララ「私もそう思ってたわ。」









 



ラトーシャ「アイビーと喧嘩でもした?」

ジーン「全然。超仲良しだよ。」

ラトーシャ「そういうときは仲良しじゃなくてラブラブっていうんだよw」

ジーン「あはは。そっか。」








 



ジーン「メシうまかったな。味付けも君がやったの?」

ラトーシャ「うん。」

ジーン「へぇ~。すげぇな。」

ララ「ラトはなんでも器用なのよ。裁縫だって得意だしね。」

ジーン「へぇ~そうなんだ?」

ラトーシャ「女一人だから男っぽくならないようにって、小さい頃からママがいろいろ教育してたからね。」









 



アイビー「 (ジーンたちなに話してるんだろ。すっごく楽しそうだな・・・。) 」












 




レオン・ディーン「 (気になるくらいなら最初からあっち座れよw) 」